SUMA GAKUEN
学校法人
須磨学園
  • HOME
  • 2024年度 2学期始業式 高校校長訓話

2024年度 2学期始業式 高校校長訓話

おはようございます。2学期の始業式にあたり話をします。この夏は、記録的な暑さが続くなど、様々な面で本当に厳しい状況であったことと思います。先日は、この地域こそ大きな被害には及ばなかったものの、迷走する台風の予報に振り回され、通常の活動にも大きな制限を加えられる状況となりました。

しかしそのようなこの夏も、皆さんは様々な感動を生み出してきました。まず先ほど報告会で話をしてくれた玉井陸斗君のパリオリンピックでの銀メダル獲得は、学校関係者のみならず、全国の数多くの人たちに勇気と感動を覚えさせてくれるものでした。特にあの6本目、あれだけの緊張感あふれる状況の中での水しぶき一つ立たない素晴らしい演技には、全てを忘れて引き込まれるような魅力、そして時が止まるかのような魔力すら感じさせてくれるものでした。そして何より、演技の合間の笑顔や、演技後に各国の選手やコーチと互いを称え合う姿は、これまで本番に向けて積み重ねてきた準備の時間の尊さと、あの舞台に立てることへの誇りを感じさせてくれるものでした。本当に素晴らしい成果を目の当たりにさせてくれたことに、改めて心からの賛辞と感謝を贈りたいと思います。

さてその他にもこの暑い夏には、皆さんにとって数多くの感動があったものと思います。サマーキャンプにおいて、友人と寝食を共にしながら様々な経験をしたこと、海外短期留学において、異文化の感動に触れながらいつもの日常ではなかなか得られないような大いなる経験をすることができたこと、学習合宿や部活動の合宿を通して来るべき勝負の場面に向けて徹底的に自分自身と向き合ったこと、数多くの部活動が全国などの大きな舞台で躍動したこと、さらに高校3年生の皆さんについては、受験生としてこの高校生活最後の夏を存分に大学受験に向けた自己研鑽に向き合う期間としたこと、… このように厳しい夏を無事乗り切ってきた皆さん全員の今の姿こそが、何より素晴らしい感動的な成果であると思います。

逆にそれらの取り組みの中で、うまくいかなかったこと、妥協してしまったこと、つらかったこと、悔しい負けや失敗を経験する場面も数多くあったのではないでしょうか? しかしいつも言っているように、そのような負けや失敗を経験できるのは、挑んだ者の特権でもあります。決して悲観的にばかり捉えるのではなく、それらを今後の成功に向けての糧となるものと信じて、むしろ大切にしてほしいと思います。

以前も話したことがあると思いますが、アメリカの教育者であった ヘレン・ケラー は現在の状況にも大いに通ずる次のような言葉を残しています。 ― 『もしもこの世が喜びばかりなら、人は決して勇気と忍耐を学ばないでしょう』 という言葉です。皆さんの厳しい状況下での様々な場面における奮闘を目の当たりにして、素晴らしい活躍を耳にして、そしてたくさんの成果に触れて、改めてこの言葉に思いを馳せました。皆さんは喜びや楽しみやうまくいくことの中ばかりではなく、それどころか数多くの苦難、失敗や負けの中で着実に「勇気」や「忍耐」が育まれているのだと思います。

「失敗は成功のもと」や「失敗は成功の母」とよく言われますが、失敗は、その原因をつきとめて改善することができれば、むしろ成功に繋がる、というのが元の意味です。ここで念を押したいのは、失敗を重ねるごとに自然に成功へ近づくという意味ではないということです。電球や蓄音機など、今の私たちの生活にも欠かせない数々の発明をしたことで知られる偉大な発明家である天才トーマス・エジソンはこのような言葉を残しています。―「私は失敗したことがない。ただ1万通りの上手くいかない方法を見つけただけだ」―という言葉です。何度もトライアンドエラーを繰り返し、発明に成功したエジソンですが、彼はその過程を「失敗」ではなく、「成功するための手段の一つ」と捉えていたとされており、この名言が今の「失敗は成功のもと」という名言の語源となったという説があります。

つまり「失敗は成功のもと」という言葉は、失敗した時に「何がいけなかったのか」「今後どうするべきか」を考えることを前提としており、反省点と改善点を整理し、そこを対処することが重要なのだと思います。ただ失敗を経験すれば成長するというわけではなく、次にどう繋げるかを考えられる人が成功に近づくということを忘れてはいけません。このように考えることができる人であれば、自らの失敗や負けといった大切な経験を悲観的に捉えて無駄なこととして目を背けたり、頑張っている人たちの挑戦や失敗に対して、無責任な誹謗中傷の言葉を浴びたりするようなことはないのだろうと思います。皆さんにはぜひ、うまくいかない自分をあきらめずに励まし、苦しんでいる人を温かく励ますような心がけを育んでくれることを心から期待しています。

今日からスタートした2学期は、1学期以上に動きのある学期です。体育祭や研修旅行など、様々な学校行事が控えています。ここから秋や冬の訪れを感じるまでの期間についても、引き続き過酷な残暑が続き、学校生活の中でもさらに多角的な判断や行動が求められる場面が数多く訪れるものと思います。そういった中では、うまくいかないこと、辛く苦しいこと、失敗や負けという経験も想定されますが、そのようなときこそがむしろ飛躍に向けての糧であると信じて、前を向いて、様々なことに挑戦し、勇気や忍耐を育んでください。まずはこれまでの暑い夏の生活を振り返り、そしてしっかりと大切な「未来」を見据えて、自身にとって真に有意義なPMTMを描いてください。

最後になりますが、高校3年生の皆さん。この厳しい夏も須磨学園を信じてしっかりとこの丘の上に集って勉強に励む姿は、後輩の皆さんや我々に大いなる勇気を与えてくれました。今後も厳しい状況もあるものと思われますが、皆さんが決してひるむことなく「勇気」と「忍耐」を育み、躍進と体調管理の両立を果たし、未来の勝を目指して価値ある取り組みを積み重ねていくことを心から期待しています。

それでは全校生徒の皆さん、皆さんの挑戦という名の種が、苦しみや失敗という名の養分を得て、勇気や忍耐という名のつぼみを生み、後に「なりたい自分」という名の大輪の花を咲かせてくれることを心から期待して、この2学期の号砲とします。この丘の上で、元気よく2学期を楽しんでください。

2024年9月2日 高校校長  堀井 雅幸